【会長声明】新型コロナ感染症奈良県緊急対処措置に関する見解

【会長声明】
新型コロナ感染症奈良県緊急対処措置に関する見解
2021年5月1日
                        奈良民主医療機関連合会
会長 宮野 栄三

奈良県は4月27日 新型コロナ感染症緊急対処措置を発表しました。奈良民医連としてその内容には、積極的な対策の面もありつつも、基本的には不十分であり、疑義を持つ対策であると考えます。
 奈良県の新型コロナの感染拡大状況は、第1波以後、最大かつ深刻な事態になっており、いまだ感染蔓延状況は進行が止まらない状態であると認識します。医療危機や県民の生活逼迫や見通しの持てない不安と恐れが日々溢れる事態となっています。とりわけ、感染拡大の上流が新規患者の増大で、濁流のように溢れ、中流・下流に流れこみ、堤防が決壊し洪水となってきていると象徴的にあらわせる現実が進行していると考えます。必要な医療にたどり着けない【コロナ“難民”】ともいえる人々が、自宅待機・療養の場で、重症化しても転院できない病院で、救急での入院調整困難の進行や受け入れ病院探しの苦難といった救急の場で、クラスターの施設での入院困難の事態、療養ホテルでの症状悪化時の対応困難など、様々な場で増加してきています。
まさに、「救えるいのちが救えない」事態がすぐそこまでやってきています。コロナ医療だけではなく、通常医療 特に救急医療への影響が必然的に生じ、その意味でも「いのちを守る」医療体制の危機がじわじわとかつ確実に進行してきています。県民の皆さんのいのちを守るための医療・救急・保健所機能がまさに逼迫し危機進行しています。この状態を直視し、緊急にスピーディーに対策する事が喫緊です。まず、なによりも、全国3位の新規感染者の抑制をなさなければなりません。いくら、中流や下流で堤防を積み上げても、上流からの圧倒的な水流をせき止めなければ、洪水は防げません。その感染拡大抑止対策として、「緊急対処措置」は適切とは思えません。県民ひとりひとりの感染防止行動をより徹底する呼びかけ(具体的な内容ですが)だけでは、感染拡大抑止は困難なフェイズにあると考えます。なによりも、人の行動には「ちょっとしたことが」は必然であり、感染者“濃度”の高い水準では「感染する・させる」の頻発に発展するものです。感染症対策の基本の【人の接触を減少】すること、すなわち「ハンマー」が今の奈良県の感染状況では必要です。

❶緊急対処措置ではなく、緊急事態宣言を国に要請することを求めます。
 その意味は、人流を一旦は大幅に減少することが目的です。県民の感染行動の適正化の推進も、もちろん必要ですが、この緊急事態を乗り切るには、一旦は感染波を迅速に降りられる措置が大切です。

❷奈良での感染拡大の様相は、大阪由来の段階でなく多面的な感染様相にあり、とりわけ、病院や施設でのクラスター防止が重要である。よって、多面的な検査体制の拡充と病院・施設等での一斉定期検査の確実な実施を求めます。
 その意味は、感染者の早期発見とコホートという感染拡大防止(のいろは)を戦略的に行う事です。

❸県民の協力や、生活を守ることへの財政対策をしっかりと国に求める事を求めます。
 県民が一致して、この危機を乗り切るために、県民をしっかり守るという施策と財政支援を見える化し、市町村任せでなく、県がリーダーシップをとって具体的に実現する事が重要です。県民の苦難の実情を把握し、しっかり耳を傾ける事がまず求められることです。実際、コロナ禍で、非正規労働者の失業、女性の自殺の増加、DV被害の増加、性暴力の増加、中小企業の倒産などいろいろな指標も出ています。

❹医療機関・消防・保健所の信頼関係構築という協力による医療・保健を守る力とシステムの実践を。
県は新感染症法にとる、〖罰則〗つきの強制とも受け取れる感染症病床増加の方策をとりました。昨年から何回も重ねてきていた『新型コロナ感染症に関する連絡会』でつみあげてきた協力・連携とはかけ離れた、唐突な発出でした。実際、県医師会にも事前の連絡もなく、不信感を表明する事もありました。決して、法の強制でなくとも、県内の医療機関・医師会などでの協力・連携は醸成されてきていたのです。ともすれば、不信や分断を産む新感染症法16条2項による施策は撤回すべきと考えます。

❺診療報酬の特措要請などという住民負担や医療分断に道を広げるような、【奇策?】ではなく、正当な医療機関の財政的苦難を税で保障することを求めます。
新型コロナ感染への克服は、医療機関も住民も行政も、ワンチームになる事がもっとも基本です。診療報酬からの捻出は、①平時の診療とは全く異なり、すべてに県民が感染リスク(被災)ある災害医療であること、②地域別診療報酬導入の前例となり、後年の平時の診療に負担を強いるものであり認められません。

➏県民に医療の逼迫の現状の生の姿を伝える事を要請します。
コロナ病棟・自宅待機・救急隊・ホテル療養などでの、現実に生じている事の生の姿を見える化し、広く県民に事実に基づく危機感により、感染拡大防止行動の必要性のモチベーションを高めて頂く事も必要かと思います。何のために、行動変容をするのかを分かってもらい、同時に県が、【なんとしても、県民のいのちを守る事】を真摯にかつ覚悟をもった姿勢を示していただきたいと強く要請いたします。
                                     以上